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同じことを違う鍵盤でやったらまた違うものになったりする。(堀江)


OY:そういういろんな音をここで聴く時っていうのは、ミックス的な耳というかモニター的というか、そういうものではなく、むしろプレイヤー的な耳になるとか?

堀江:うーん、まぁもともとここは練習部屋だからね。LIVEとかツアーとかレコーディングとか入るとなったら使うものをここにセットして練習したり、それぞれのシンセとかの音を確認しながら音作りをする工房みたいなところ。ここでキーボードダビングをしてスタジオに持ってってその音で弾いてみるとか、LIVEのリハーサルで試してみるとか、その元をつくる場所。そういう意味ではプレーヤー的かな、やっぱり。
 
OY:練習・・・、するんですね。

堀江:練習は・・・しな・・するっていうか、譜面を見ながらやるんだったら当日譜面見てなぞればいいんだけど、そうは言っても曲を一回カラダにいれて入れてからじゃないと、曲に対して失礼にあたるじゃない。
 
OY:それは曲を覚えるとか解釈するっていうこと?スキルとしては堀江さんだったらできないことなんてほとんどないわけじゃないですか。

堀江:いやスキルもありますよ、やっぱり。スキルがないと出来ないこともあるから、自分なりにちょっとアレンジしなきゃいけないこともあるし。
 
OY:コレは難しい!っていうこともあるんですか?

堀江:ムズカシイっていうの、ある。特に苦手なのはピアノの弾き語りで、むこうが一人で歌ってこっちが一人で弾くっていうのが基本的にはムリ。
 
OY:それは息、ブレス感とかの問題とか?

堀江:それもあるけど、ドラムが鳴ってないとけっこうムリ。
 
OY:自分のリズムとかビートじゃなくて、

堀江:そう、だれかのビートがのってないと。よく、鍵盤の人はピアノとかVocalの後ろとかですぐできるんでしょ、弾いてってよく言われるんだけど、どうしたらいいのかわかんない。
 
OY:そうなんですか。

堀江:鍵盤の人はとにかく鍵盤なら、ピアノもオルガンもシンセもなんでもできるだろう、ピアノ弾けるならシンセ弾けるでしょ?オルガン弾けるんだからピアノ弾けるでしょ?みたいに思われがちだけど、それは大間違い。
 
OY:それぞれ違いますもんね。

堀江:違うからね、タッチもノリもぜんぜん。オルガンもローズもウーリッツァーもそれぞれ違う楽器として接しておぼえていく、ローズとピアノはぜんぜん違うわけだから。鍵盤の形して音がでるものなら全部一緒なんでしょ、なんでも弾けるんでしょっていうのは鍵盤弾きへの幻想だね(笑)。アコギとエレキ以上にぜんぜん違うよ。
 
OY:音の鳴りひとつとっても、7th(セブンス)にmajがつくかつかないかでローズだったらぜんぜん変わってきますもんね。

堀江:そうそう、そうなんですよ。同じことを違う鍵盤でやったらまた違うものになったりする。
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なんでこの人はこの曲を、このパートをGにしたんだろう、っていって曲を書いてる人以上に考えるとこがある。(堀江)


OY:スキルの練習というよりも、曲をおぼえるのが大変そう。楽器も多いとなればなおさら。

堀江:でも実は曲をおぼえるのはむかしからけっこう得意だったよ。
 
OY:そうはいっても同時進行で参加しているバンドもプロジェクトもたくさんあって、それぞれ向き合うモードも違ってくるわけですよね。

堀江:使う機材もセッティングも変わってくる。
 
OY:そこを、それだけ楽しみ方がたくさんあるっていう捉え方をしてる?

堀江:そうだね、それぞれチームとしてだから。ステージに立つ人以外も含めてね。スポーツ競技のチームと少し似てて、違うチームに飛び込むとノリも違うしプレイも違うし。そういうところは楽しい。
 
OY:そう考えると、面白そうだな、とも思うんですけど、夏のFES時期とか大変なんじゃないかなって、傍から見て思ってました。同じステージに違うプロジェクトで何回も登場するから。

堀江:自分でもよくおぼえてきたな、って思う。
 
OY:一応コード譜くらいは置いておいたりするんですか?

堀江:コード譜を置く曲もあるし、置かない曲もあるし・・・好きな曲は置かないな。だから置いてると苦手だなってわかっちゃう。そもそもミュージシャンって譜面なりなんなりを上手になぞるのがミュージシャンだと思われてるかもしれないけど、それとはちょっと違う。
 
OY:そうですよね、表現ですからね、なぞるんじゃないですよね。

堀江:まだそういう発想の人って多いよね。そうなっちゃうとバンドっぽくも見えないんだけど。
 
OY:そんなことを先日取材したCaravanも言ってましたよ。

堀江:そう?
 
OY:譜面どおりに弾いてくれる人もいるんだろうけど、白根さんや高桑さんとやった時、彼らは曲とか音楽のそもそもの解釈とか、

堀江:意味とか、何がこのコードは表現をしているか、みたいなね。ただのGでも響き方は違うから。Gの響きひとつとってもなんでこの人はこの曲を、このパートをGにしたんだろう、っていって曲を書いてる人以上に考えるとこがある。だってGなんてただのGだから。そこをサウンドを通してみんなで解釈してると何かを発見したりして、もっと曲を探りたくなるんだよね。
 
OY:そういう風に楽曲への世界観をメンバーで合致させてやるっていうのと、譜面だけみてやるのはやっぱり違うって話をきいたんですよ。

堀江:やっぱり響きがちがってくるものだし。
 
OY:どういうアプローチでGを鳴らすか、

堀江:とかね、どういう”間”でGを鳴らすかとか、色でいったら何色(なかんじ)とか、その辺はCaravanと同じかもしれない、発想が。
 
OY:ストレートな音楽をやっていれば、そういうところを深く考えますよね。

堀江:ていうのはさ、ルーツにブルースとかを聴いていると、ブルースはコード進行が3つとかの少ないコード進行の中で自分のどういう歌を歌っていくのかとか、サウンドだけ聴くとすごくシンプルで、どこで違いを出すかとか。
 
OY:詞も2回同じこと繰り返して1回おとすっていう定型があるし。

堀江:そう。繰り返すものに対して興味がわくんだよね。あとはその人の持つ音色とか音の匂いだったり。
 
OY:シンプルなところには深みがありますよ。

堀江:もちろん技巧にも耳はいくし魅力的なものだけど、そこは技の領域だから、そこを突き詰めていってある一定の水準を超えると技だけみたいになっちゃって、なんだか音楽的なものではないところが目立ってくるよね。そこまでいくと音楽じゃないとこに気をとられちゃう。そこのギリギリのとこを行きたいな。
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