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BNCケーブルをかえたら、だんごになっていた音のかたまりが整理されたかんじ


前回はテンポよく会話も弾み、最後は食べ物の話で終了しましたが、今回はがらっと変わってデジタル周辺環境のお話です。濃くなってきましたよ?

mino_1_250OY:食べ物の話からガラっとかわりますけど、美濃さんにはBNCケーブルのSL75Bをたくさん使ってもらってるんですよね。
ミト:BNC、あークロックの。
美濃:あれはね、正直変わらないと思ってたんですけどね、変わったんですよね。
ミト:変わらないと思ったけどっ(笑)。
美濃:まさかーって。音声流れてるとこじゃないですし。
MIX中に変えた時の印象をメモしておいたんですけど、えーと、キックのアタック感が鮮明になって、タイトになったんでしょうね。”ベチ”って鳴り終わった時の余韻がすっきりして、そのなんていうのかな・・・
ミト:てことはスピードがあがったってことじゃないかな。
美濃: 「ドゥン」ってぼけてたとこが「ドッ」ってなったから消えた後の余韻とか埋もれてた音が見えるようになってMIXしやすくなったんですよ。
 
OY:作業性が上がったんですね。リバーブのかかりやコンプのかかりとかが・・・
 
美濃:見えますよね。空気感が。
sl75_rr_200ミト:たいがい「早く」って、上が伸びてると立体的になるじゃない。ナローだと2面にしか見えない。
ところが早いものがちゃんと前にあって上が伸びると上下があって奥行きが見える。
スピードもあるからリバーブのヌケとかが後ろに聴こえて、ちゃんと存在するようにみえたりってのはあるよね。
美濃:だんごになってたのがちゃんと整理されたかんじ。
ミト:うん、それはよくわかる。
美濃:もともとローゼンダールから、デフォルトのその辺にあるような黒いアンテナの線みたいなのを使ってたんだけど、そもそもクロックジェネレーターを導入した時も、ちょっと”キュっ”てなるけどそんなお金を出すものかな、ってちょっと懐疑的なとこあったんですけど、その後ちゃんとしたBNCケーブル(SL75B)を使って真価が発揮されたのかな、変わるんだってわかりましたね。 そういえばSPDIFもありますよね、同じ線で。
 
OY:そうですね。(上の写真:SL75Rのこと)
美濃:あれもびっくりするくらい変わったんですよ。ちょうど小淵沢で作業中に、そうだケーブル変えてみよう、って変えたら、
ミト:S/PDIFも同じ線であるの?
美濃:そう、BNCと同じ線で。それがすごいフラットっていうか。今まで使ってたのと比べて、”ん、地味になった?”って印象あったんだけど、んーなんていうのかな、
ミト:ワイドになった?
美濃:そうそう。
ミト:えー、それすごい気になる。使ってみたいー。ていうのも、僕結構エンコードしたりとか、サンプルとかライブラリー用に、動画サイトの音声とかも集めたりしてるんです。で取り込む時にボリュームとか触るのイヤだから、S/PDIFデジタルでHDレコーダーにどんどん流し込んでいくんですよ。そうするとレベル関係ないですから。
美濃:もんのすごいフラットな印象だよ。これもまた戻れなくなっちゃった感じ。
ミト:それだと助かる。やっぱ歪むからさ、でもエンコードしてる最中なのか、そうじゃないのか。そんなことをライブラリー作りながら気にしたりするんです。
 
AS-808R_200OY:そんな同軸ケーブルでそ新製品が出ました。AS-808B(BNC)とAS-808R(RCA)。
ミト:おー、気になるなー。今もふつうのRCAピンよりはいいであろうものを使ってるんだけど、あんまり手を入れないところだからいろいろ変えて試してみたいな。
美濃:僕が使ってるSLシリーズは生産完了なんでしたっけ?
 
OY:実を言うとそうなんです。これだけ盛り上がっているのに惜しいんですけどね。ですけど、新製品も出ましたし、SLシリーズもまだ直売店には在庫が残っている可能性もあるので、(しかも直売店では特価で販売しているのでこれを最後のチャンスととらえて)直売店にGO! みたいな。

ミックスしてる時にこの音が好きだってものは、そのままマスターにしたい

mito_2_250ミト:美濃くんとやるときはさ、アルバムのマスター落とす時にいろいろやったじゃない。
美濃:やったやった。 Pro Tools HDのマスター・トラックの出力をAES/EBU経由でMAX BCL通して、同じPro Tools HD内の別トラックにレコーディングしたものと、同時にMAX BCLのS/PDIF出力を別コンピューターにレコーディングしたもので2種類マスター作ったよね。
ミト:個性が全然あるんだなーと。どっちかというとプロユーザーレベルの話になっちゃうけど、ちゃんとリファレンスのある人だったら違いは確実にわかるだろうな、っていうくらい個性がある。
 
OY:そういえばこないだのレコーディングではAES/EBUのケーブルを使い分けてマスターを2つ作ったと聞きました。
美濃:そうそう。
 
OY:あれ、前の日に僕がスタジオにTUNAMI TERZO XXとACROSS 900 XXの2種類持ってっといたんです(笑)。明日美濃さんミトさんやるっていうんで。
美濃:それで気に入って両方買っちゃったんです(笑)。もう思う壺(笑)。
ミト:美濃くんが好きなのはガっと広い方、だよね。白くて太い方(TUNAMI TERZO XX)。僕は前に来る方(ACROSS900 XX)で。
美濃:そうだね。一般ユーザーが聴くんだったら黒いACROSS900XXがスピード感があっていいね、ってなってACROSS900XX使った方をマスターにしたんだよね。 で、ハイビットハイレートのハイエンドオーディオ向けにはTUNAMI TERZO XXで落としたものをマスターにしたんです。
ミト:やっぱり最終の2MIXって行程ではさ、プレスした時の印象はどこまで変わらないか、ってことが重要じゃないですか。この時点で目標が見えて定まっていると、ちょっとリバーブが奥にいるな、とか、ちょっとまだ濁ってるな、みたいなことを思いつつ、マスタリング行程でなんとかなるだろうっていう発想とはちょっと違くて。
美濃:モヤモヤしたものがなくて到達点がはっきりしてるからね。
ミト:そう、ちゃんと見えた上でのことだからマスタリングに持って行く時に、気になるモヤモヤを説明しなくてもいい。
 
OY:最後のマスターを作る段階でケーブルでマスターを変えるっていうのは重要だったんですね。
ミト:そうですね。これからこの辺気にしてマスター作る人増えていくんじゃないかな。ていうかもう増えてるよね。今PT内のバウンスでマスターにすることってある?
美濃:あんまりないよね。
 
mitomino_1_250OY:ということはさっき話に上ったMAX BCLにAES/EBU経由で?
美濃:そうですね。あと最近だとKORGのMR2000にって人も多いみたいですね。
 
OY:基本的にマスターは外部で?
美濃:そうですね。バウンスせずに。なんか変わりません?ミックスしてる時に聴いてるのとバウンスしたもの聴きなおすと違うじゃないですか。
ミト:バウンスは確実に違うよね。
美濃:ミックスしてる時にこの音が好きだってものはそのままマスターにしたい。
ミト:思うに、SD2がなくなってから特にそういう傾向が顕著というか。
 
OY:SD2=サウンドデザイナー2。(Pro Tools6まで標準的だった音声ファイル形式)
ミト:やっぱSD2ファイルって良かったんじゃないかな。AIFFとかWAVってオーディオ情報と同時に同じ場所に音ではない情報が存在しているらしいんだけど、SD2は音声信号と別の文字情報だとか、そういった情報は別になっていて干渉しない。僕も実際バウンスファイルをそれぞれ検証したことがあるんだけど、たしかにSD2の方が違和感がないんだよね。
その頃CubaseとかNUENDOはまだSD2が使えていて、やっぱり比べると出来上がりに違和感がないというか素直なんだよね。WAVでの作業が増えて一般的になってからこういった障壁が増えたような気はしますね。
 
OY:今はPro ToolsはSD2選べないですものね。
美濃:24MIX(Ver6.4.1)なら選べるよ。(美濃さん所有のPro Toolsシステム。2002年頃MAC OS Xのみ対応のPro ToolsVer7にバージョンアップしHDシステムと192I/Oという現在のシステムに移行した)
ミト:そういう点もあって、ヨーロッパとかにはまだ24MIX使っている人も多いですよ。


美濃:Pro Toolsで思いだしましたけど、大分変りましたね。こないだミトくんとやったスタジオの音。
 
OY:あーわかりました?DigilinkケーブルをPA-26HDに変えたんです。
美濃:MIDにパンチがあるっていうか。でも機材は変わってないし、どこを変えたのかわからなくてスタジオの人に「なんかいじった?」ってきいたら、Digilinkケーブル変えたんですよ、って言われて。
PA26_500ミト:へー、そうだったんだ。
 
OY:さらにBNCも一緒に変えてるはずです。
美濃:僕のと同じSL75Bですよね。
ミト:PA-26HDはどのくらい作ったんですか?オフレコかな?
 
OY:ドンズバはオフレコですけど、実際作るときはドキドキしましたよ。ギターケーブルと違ってどんどん買い換えたりもしないし、そもそも使うところが非常に限られてる。
商業スタジオか個人でバンバン仕事してらっしゃる方のみですからね。果たして売れるのかな、って。

ミト:そしたら?
 
OY:それが想像以上に出荷されてるんですよ、新しいI/Oが出た今でも。嬉しい誤算というか、実際の話、リリースしてすぐは欠品続きになるくらいだったんですよ。
美濃:みんな待ってたってことですね。
 
OY:そういうことなんでしょうね。


前回とはうって変わってかなり突っ込んだ、というかいきなり突っ込みすぎ!そんな話題が繰り広げられました。次回もさらに深く濃いお話が続きます。お楽しみに!

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