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僕が最終的に立ち戻ったのはやっぱり物(音楽)を作るってことだった。そこに立ち戻ってまた音楽を作り始めたんですよ。

O Y:そういうのもつまりはコロナ禍というのが影響しているとも言えるわけですけど、その辺のことはどうですか?
 S O:いろんな側面があって。例えば、音楽で切りとるこのパンデミックっていうことと、人生っていう枠で切り取ってみたこのパンデミックっていうのもちょっと違うし。パンデミックになる前って元々、MONDO GROSSOの制作に向かってなかったわけで。
その頃は、MONDO GROSSOの前作の流れが落ち着いた後で、どっちかっていうとRHYME SOに割とフォーカスをして活動していたんです。そのRHYME SOを完結させてから、その後またMONDO GROSSOに戻るのかどうなのか。それとも誰かのプロデュースやるのか、他に面白いこと始めるのかどうなのかなというよう時期でもあったんだけど。
でもそこでパンデミックがやってきて。さてどうしようかねっていうね。
O Y:色々な葛藤が生まれますよね。

 S O:でも、パンデミックの始まった頃とRHYME SOのリリースが重なってしまって、やろうとしてたことがほぼやれなくなっちゃったんでね。パフォーマンスもほぼできないし。リリースしても僕たちが思ってたような結果とか、展開にならなかったりして。
パンデミックになってからの1年弱ぐらいの期間は、もうそういう悶々とした気持ちでした。リリースはしているものの何もできないという状況の中で、何をやっていいかわかんないようなことになっていた。
それで生配信をYouTubeで毎週日曜日にやったりしてたんだけど。そこで皆んなが喜んでくれているのも全然良かったんだけどね。誰かのためになっているとか、自分の中でも毎週決まった時間に音楽を探したり掘ったりすることもすごく栄養にもなったし。
でもやっぱり、何ヶ月間かやってるとお腹いっぱいっていうか。もうわかった、これやれるし楽しいけど、ここから先もこのルーティンの中で配信を観てる人だけ喜ばせてもだし、自分だけ喜んでてもしょうがないしなって。
そうなった時に、俺の本分はやっぱり作ることだよねっていうのに気づいて。僕が最終的に立ち戻ったのはやっぱり物(音楽)を作るってことだった。そこに立ち戻ってまた音楽を作り始めたんですよ。

O Y:パンデミックになって色々やってみてそれに気づいた。
 S O:はい。でもその頃作った曲は、もう本当にその頃の感情を100%投影しているもので。SHINICHI OSAWA名義のものなんだけど、そのスケッチは今もまだ温存してあって。すでに20曲ぐらいあるんだけど、とにかくとても荒々しいもので。全然ポップじゃないし、ものすごい歪なものだったりで。エレクトロともテクノとも呼べないような、なんかこうドロドロしたものなんですよ。
O Y:そういえば、大沢さんの日曜日の配信とかでも、たまになんかめちゃくちゃな時ありましたよね笑。
 S O:そうそう、あったよね笑。よく知ってるね。
O Y:日曜の夕方に配信を覗きに行くと、なんかゆったりといい感じにやってるなと思ったら、その翌週はめちゃくちゃやってんなって笑。
 S O:もう破綻してるっていうかね笑。めちゃくちゃだったよね。でも、そこでそれが引き出せたのは僕にとって良くって。それがほぼほぼ形になってきたんだけど、スタッフとの協議の中で、ここで一つそういう歪なものを形にするってのもありだけど、MONDO GROSSOの制作に戻ってみるってのはどうですか?っていう提案があって。それもありだよねって思えた。そういう荒々しいものっていうのは、その頃のみんなが同じように荒れていて、それが野放しになるようなタイミングじゃなくても、その当時のエネルギーっていうのを回顧録として後から出しても成立するものだろうなという風に思えたので。そこで逆にMONDO GROSSOの制作に向かうのはまんざら悪いアイディアじゃないと思って。それで2020年の12月ぐらいからMONDO GROSSOのアルバムの制作を始めたんですよ。
O Y:去年の12月7日の大沢さんのnoteにちょうど1年ぐらい前に制作が始まったって書いてあるのを拝見しました。
 S O:そうでしたね。でもやっぱりこのコロナ禍で、みんな多かれ少なかれ生活の中で、物を作る人じゃなくてもね、この2年間、特に2020年は何かしらあったと思うんですよね。
O Y:東日本大震災と福島原発事故の時と同じ雰囲気というか通じるものがありますね。
 S O:うん。何が起こってもおかしくないし、いつ世界が終わってもおかしくないみたいなことも考えたりした人もいただろうし。たぶん僕もそういうことも思ったし。そういう状況の中で出てきたものっていうのは、意外と本当に正直なものだと思うんですよね。その中で、やっぱり俺って音楽作る人間なんだっていうとこに戻れたのはすごく良かったですね。
O Y:そのドロドロとしたドギツイのを作ってた状態から、MONDO GROSSOに戻ってうまく切り替えられましたか? 今作もやっぱり生みの苦しみはあったのでしょうか?
 S O:はじめのうちは同時進行でやってたのもあって。MONDO GROSSOに飽きると、そのドロドロしたのに戻ったり。でも、そのドロドロした音源のスケッチが20曲ぐらいあったので、それとの対比でここじゃない何かっていうのに向かえたのもある。そのお陰でMONDO GROSSOをやりたいってモチベーションが生まれたから。だから今回は生みの苦しみっていうよりも、自分の中でのトライアンドエラーの方が多かったかな。だから苦しくないんですよ。どんどん次の違うアイディアを出してスケッチするだけなんで。制作が進まず大変っていうよりは、バージョンがどんどん変わっていったり、たまに曲ごと入れ替わっていったりとかね。そういうのも含めて、今回のアルバムの制作は楽しかったですね。

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