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「現場の人が良いといった音が、良い音なんです。」(BOH)

OY:機材のセッティングですが、課長は足下の入れ替わりが早い印象があります。
課長:機材のセッティングに悩むか悩まないかという話ですと、僕はこれだって決めたら、そこからはあまり動かないです。でも試行錯誤そのものが好きで、なんでも試すのが好きなので、なかなか決められない。
OY:決めちゃうと終わっちゃうから?
課長:そうなんです。
BOH:入れ替えが激しいってこと?
課長:そうです。バンド今みっつやっていて、こっちのバンドで合わなかったら次のバンドで試そうって。
BOH:ベースはずっとSugiベースですよね?
課長:ずっとSugiの4弦です。最初はIbanezの82年のMCシリーズを使っていたんですけど、中古だったのでネックが直せなくなって。それからいろいろ探して、Sugiにたどり着いたんですが、実はSugiのマスタービルダーの方が僕が最初に弾いていたIbanezのMCシリーズを設計した人だというのがわかって、「じゃあSugiとMCシリーズのあいのこみたいなのを作ろう。」ということで、今使っているメインのベースを作ってもらった、という経緯なんです。それからずっとこれ1本です。
BOH:ベース以外の機材をどんどん変えていくことでモチベーションを保つとか。
課長:そうかもしれないです。エフェクター、特にシンセベース系はころころ変わってます。物欲が激しいんでしょうね。でもレコーディングは全然変わっていないです。レコーディングエンジニアの美濃さんに勧められて、オヤイデの銀線ケーブル(FTVS-408)使っているんですけど、これはもう、バチっときてそれからずっと使っています。
BOH:レコーディングの時はエフェクトかけてレコーディングします?それとも直でいって後がけみたいな?
課長:直ですね。
BOH:課長はすごくエフェクティブにしてる時もあるでしょうけど、基本はタッチがきちんとみえるサウンド作りしてますよね。
課長:それはもう、すごく意識しているところです。
BOH:課長がEmpressのコンプを使っているのも、そういう理由かなって思ってるんですけど、あってますか?
課長:Empressも結局、曲ごとに使ったり使わなかったりですけど、すごく自然にかかるし、あって欲しいつまみが全部あるじゃないですか。出来ることなら3バンドくらいでいいので、マルチバンドコンプ作れたらいいなって思ってます。今日本だと手に入るものは限られているし。

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BOH:僕もちゃんと細かく設定できるコンプじゃないとイヤ。今使ってるコンプは、本来DAWやレコーディング用のFMRオーディオです。ナチュラルさを追求するとDAW用じゃないとだめ、でも僕みたいなスタイルだと、ギターソロ的なサスティンの長い音にしたい時もある。それをFMRオーディオみたいにナチュラルじゃないコンプでサスティンをガバーって作ってしまうと、タッチまでうっうっ、ってなっちゃう。だから僕はサスティンはディストーションで作りたいんですよ。ギターみたいな目の細かい歪みがかかってくれて、それプラス、クリーンな音も混ぜられるディストーション。サスティーン感は全部ディストーションで作って、混ざった時にはベースは歪んでいなく聴こえるディストーション。歪んでますよーっていうサウンドを主張したいわけじゃなくて、ただ音を伸ばすためとか、ディストーションを少しかけるとハイが持ち上がるので、その分ハーモニクス使ったサウンドが出やすくなったり、そんな効果を狙っての使い方。もちろん、僕はディストーションもコンプレッサーだと思ってます。というより、すべてのエフェクターはコンプレッサーだと思ってます。コンプっていうのは、いわゆる周りの人のコンプの使い方じゃなく、ガンって思い切り弾いたときに、バフっていう低いところだけ、イヤな部分だけをキュっと、ちょっとだけ抑えてくれる。ゲージとかもちょっとしか振れないですぐ戻る、アタック遅めで、
課長:リリース早め。
BOH:だからどんなに深くかけてもレシオも4:1くらいのかかり具合でやっています。あんまりコンプコンプしてるというより、音のまとまり部分だとか、サスティンの部分だとか、音程感部分だとか、にディストーションをどう混ぜていくか。
課長:ライブとレコーディングで、コンプのセッティングを変える変えないというより、どこに行ってもだいたい今の説明の感じですか?
BOH:基本いつもと変わらないものを持っていって、先方のオーダーがあれば、こんな音にしてくれとか、そういうものがあればアンプ直で作る時もあります。ただ全部の回路にノイズリダクションをかけるようなことはやりません。今使っているアンプがMarkbassのデジタルアンプなので、いろんなシュミレーションができるんです。なので、先方の求めるものに合わせやすくしています。僕はこのサウンドでいきます、というものがないので。
課長:周りのバンドなりプロジェクトの音に適応させていくということですか。
BOH:現場の人が良いといった音が、良い音なんです。
課長:とっさの状況やオーダーにすぐ対応できるのって重要じゃないですか。僕はそんなにいろんな現場でやっているわけではないですけど、やっぱり要望言われた時に、そこでぱっとでてこないと、結局なんかふわっとしたまま終わっちゃう。そういう状況ってイヤだから、BOHさんのような対応の速さってすごく大切だと思います。
OY:BOHさんがライブとレコーディングのセットがほぼ一緒というのは、少し意外な気もします。
BOH:一緒のことができない機材を使いたくないんです。ただ演奏に対する音作りの仕方については、ライブとレコーディングでは全然違うのでそこは変えますけど、この機材ライブではいいんだけど、レコーディングではダメなんだよなー、みたいなものを使いたくない。よくアーティストでエンドースだから見えるところとか取材とかではこれを使うけど、レコーディングだとFenderのJazz Bassの方がいいからこっち使う、みたいなのはやりたくないなぁと。
課長:それは確かにそうですね。ちなみに僕Sugiとはエンドース契約は結んでいないんです。特にレコーディングはSugiももちろん使いつつ、曲によってムスタングベース使ったり色々弾いてます。Sugiの人も僕がレコーディングでFender使ってるSNSの写真にいいねしたり、オープンなんです。Sugiの自信の表れでもあり、愛の表れなのかなと。LIVEはやっぱりSugiが一番合うので自然と使うことになる。そしてばっちしのメンテナンスをSugiベースに施して頂く。Sugiさんには僕の考えやスタイルをしっかりと汲んでサポートして頂いています。もちろんケーブルの話になればオヤイデさんも、です。

*BOHさんがはじめてスラップサウンドを聴いたベーシスト“Marcus Miller”

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