ARTIST REVIEWS

Engineer/Studio

AR-910M > 音色が非常に音楽的なので録音後の補正の必要性を感じない

 
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Artist Profile

大川タツユキ
東京都文京区出身の音楽プロデューサー、作曲家、編曲家、マニピュレーター、シンセサイザープログラマー、レコーディングエンジニア、ミキシングエンジニア、DJ。
Los Angelesでレコーディングコーディネーターとして音楽のキャリアをスタート。
数々の有名スタジオにてレコーディング作業に立ち合い、スタジオワークを習得する。
帰国後、浜崎あゆみ、安室奈美恵、MISIA、CHEMISTRY、m-flo、19(ジューク)、leccaなど様々なアーティストに作編曲・リミキサー・エンジニア・として関わるほか、映画やTVCMの音楽も手がけるなど、多岐にわたる。

User Review

現在、POP MUSICシーンの90%以上は、いわゆる「歌モノ」である。
MIXでは、センターに大きく定位されるVocalが当然一番目立つので、質も求められる。
クリアで抜けの良いトラックだったとしても、歌がこもっていれば全体的にも抜けてこないし、歌がペラペラだと全体のパンチも出ない。
要になる歌の音質がイマイチだと、トラックも台無しになってしまうのだ。
良いVocalを録るためには、マイク、プリアンプ等にこだわるのは当然だが、機材の良さを最大限に引き出すには、マイクケーブル、電源ケーブルの存在は見逃せない。

今回、ケーブルによる音の違いを探るため、数種類のケーブルを使い、試し録音をした。
使用した機材は、マイクにBLUEのBOTTLE、プリアンプはNEVE1073woNON EQで使用。
つなぎ換えたヶ所は、BOTTLEと1073の間。また、プリアンプの電源ケーブルもつなぎ換えた。

QAC-202(※生産完了品)

L_QAC-202-all_w900HIの抜けがよく低音も引き締まった感じで、とてもバランスの良い音色。
オケに入っても埋もれないし、ボーカリストの細かい息使いまでリアルに再現してくれる。
 
 
 

QAC-212(※生産完了品)

QAC-202と同様の再現性能にプラスして、中低域のいわゆる太さ、暖かさみたいな部分がプラスされた感じ。

SL-110AD(※生産完了品)

クリアで伸びのある高域が特徴で、音の立ち上がりが良い。
リバーブなどの空間系エフェクトの掛かりが良かった。

PA-02 customized(※生産完了品のカスタム品)

pa02xlr_960解像度が高く非常に音楽的な音色。高域もきれいで低域も力強いしっかりとした音。
レベルが上がったのかと錯覚する位、音が前に出てEQの食いつきがよく、録音後の作業もしやすい。
 
 
 

ACROSS 900XX(※生産完了品)

PA-02同様に高解像度だが、さらに中低域の暖かさ、太さ、高域の伸びが加わり、結果としてVOCALISTが目の前で歌っている様な高い再現性を実現。
VOCALISTの「歌っていて一番歌いやすかった」との感想からも、このケーブルの原音再現性の高さが伺える。

AR-910M

AR910M590_今回試したケーブルの中で一番バランスがよく、全帯域とも音の立ち上がりが良い。
EQの食いつき、空間系エフェクトの掛かりもいいが、音色が非常に音楽的なので録音後の補正の必要性を感じない。
プリアンプ、マイクの性能を100%引き出してくれる印象。
 

BLACK MANMA-α(※生産完了品)

blackmamba_a_001_800_1プリアンプに元から付属していた電源ケーブルに比べ、若干レベルが上がった感じで、音の立ち上がりが向上。
結果として音の輪郭とアタック感が増した感じ。
 
 
 

TUNAMI GPX(※生産完了品)

tunami_gpx_200BLACK MANMA-α同様に音の立ち上がりが向上し、粒立ちがはっきりしてエッジが効いた音色。
BLACK MANMAよりもさらに前に押し出してくる感じの音になり、低域の暖かさと高域の伸びがプラスされた感じ。

TUNAMI GPX-R(※生産完了品)

TUNAMI_GPX_R_300bTUNAMI GPXに低域の太さと力強さをプラスした感じ。
力強い低域のバランスが多くなった結果、VOCAL単体で聞くとGPXに比べて少し地味になった錯覚に陥るが、決して高域の伸びが失われたわけではない。
そこで24トラックある楽曲のすべてのトラックの録音時のプリアンプの電源にGPXとGPX-Rを使って録音してみた。
すべてのチャンネルを同一レベル・同一エフェクトでMIXし視聴した結果、GPX-Rの方が高域、低域ともに伸びがあり、オケの厚みも増した印象があった。
 
 
 
今回のケーブルチェックでは、電源ケーブルによる音への影響が予想以上に大きく決定的なものであった為、その重要性を再認識した。
プリアンプやマイクなどの機材個体差による影響に比べると少ないが実際スタジオでのレコーディングは、トラックとヴォーカル合わせて100トラック以上あることも珍しくなく、1トラックあたりの影響が微々たるものでも100トラック以上の楽曲をMIXした時の差は歴然だ。

今回試聴したマイクケーブルはどれも素晴らしかったが、録音する音源によってケーブルを使い分けるのも面白いかもしれない。
以前、某マスタリングスタジオでアルバムのマスタリングをした時に、楽曲によってケーブルを変えているエンジニアの方がいたが、レコーディングでも同じ方程式が当てはまるかもしれない。

生音の録音では,AR-910, ACROSS 900, PA-02が個人的に好印象であった。
歌、アコースティックギターなどの細かいピッキングやダイナミクス、息遣いが全帯域で忠実に再現された。
LINE系ならPA02, QAC202, QAC212あたりも好印象であった。
 

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