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【音がもつ表現や現象、自分の才能を音楽というフォーマットで作品としてまとめたいといつも思っていました。】


photo © Alberti Novelli

OY:Kyokaさんの音楽はアートと深い関係があるようですが、どのような関わり方をされているのでしょうか?
KYOKA:消費されることが目的ではない音楽作品。
または、音がもつ表現や現象、自分の才能を音楽というフォーマットで作品としてまとめたいといつも思っていました。
そんな思いを支えてくれるのが、作品を消費するものと考えずに、音楽も芸術のひとつとして捉えてくれる人たちなのかもしれません。
だから必然的に私の作品をアートとして理解してくれる場所やイベントへ招かれることが多くなって、そこで深い関わりが生まれてくるのかもしれませんね。
OY:実験音楽や、エクスペリメンタルと呼ばれるジャンルは、Kyokaさんにとってどんなものなのしょうか?
KYOKA:自由に、自分の課題に邁進できるフィールドが整っている、懐が最高に広いジャンルだと思っています。
究極の自由研究が許されるからこそ、夢も希望も未来も、あらゆることが実現可能な稀有なジャンルだと思っています。
OY:Kyokaさんは、CM音楽も制作されていますよね?
今までにどんなブランドとコラボレーションしてきましたか?
KYOKA:主要なところで言うと、日本やアジアでは、靴の大手販売店を展開する「ABCマート」、 スポーツブランド「Puma」、 化粧品の通販を手掛ける「ORBIS」などのCM音楽を担当しました。
それ以外にも、Apple社の「iPhone7」のCMにも楽曲が起用されました。
このCMは全世界向けだったのですが、今まで経験したことのない規模で自分の曲が同時多発的に世界中へと発信されました。
それは、これまで味わったことのない“快感”を覚えてしまいましたね笑。


photo © Alberti Novelli

OY:Kyokaさんは、フィールドレコーディングを大切にしているそうですが、どんな音を録音してきましたか?
KYOKA:ライブでいく先々でフィールドレコーディングをします。
滞在先のホテルの周りをうろうろしながら録音したり、ライブ翌朝の帰りのフライト前にさっと録音したり、日記感覚で日々の活動としてレコーディングしています。
ちょうど今(インタビューを行った2022年3月某日)、コロンビアの現代美術館のエキシビションで、フィールドレコーディングした音のみで制作した楽曲を使ったインスタレーションが行われていますよ。
OY:2021年3月に行われた文化庁メディア芸術祭の授賞式音楽を担当したそうですね。
脳科学への興味を初めて作品に取り入れたものだとお聞きしましたが、Kyokaさんの音楽と脳科学への興味にはどういう関係性があるのでしょうか?
KYOKA:たとえば、私たちの気が散ったり、安心したり、注目したりする状態が、実際に体や脳のどのメカニズムがそうさせているのかを知り、その仕組みをもとに作曲をするのが、最近の好きなことというかハマっている活動のひとつです。
曲作りや音楽と切り離しても、脳科学を深く知ることで、自分の感情や行動を今まで以上に熟知できるところに面白味を感じています。
脳科学的に人の行動や思考を見ていくと、なんだか自分がちょっとしたロボット(ディバイス)に思えてきたりして、とっても面白いです。
OY:音楽と脳や感情と記憶の相似性など研究されているそうですね?
具体的にはどういったことを研究なされているのですか?
KYOKA:音楽のどんな要素が、高確率で各個人の過去の記憶をトリガーできるのかとか、大体の人が明るく感じる音の質やタイミングやあり方は何かを、音楽からのスタートではなく脳からのスタートで追求するといった作業をやっているのですが、そういうことを学んでいった結果、逆に脳科学なんて存在すらしていなかった時代の音楽や、昔から使われてきた音楽理論や手法が、いかに脳科学的に見ても理にかなっていて、きちんと体系化されていたかを再確認したり、答え合わせできるところも面白いです。

個人的には脳科学で知り得たことを活かして、音楽や作曲の新しい構文を、身体の機能からアプローチして作っていくということに最近専念しています。

Electric Campfire 2013 VillaMassimo – photo © Alberti Novelli

OY:2019年にマンチェスターで行われたフェス『Aphex Twin Curates』への出演や、2020年からスタートした京都壬生寺でのサウンドインスタレーション、羽田空港を舞台に行われたメディアアートイベントなどでも作品を披露されています。それ以外にも東京やモントリオール、バルセロナ、韓国で行われたMUTEKなど、コロナ禍で中々ライブはできない状況がありながらも、Kyokaさんの活躍に触れる機会はありました。そして2022年はまた新しいプロジェクトを進めていると聞きしました。
どのようなプロジェクトを行なっているのでしょうか?
KYOKA:現在進めているプロジェクトは、Debris Projectのことですね。
これは、香港大学のコンピューターラーニングの方々が声をかけてくれました。
プロジェクトの中で私は主に「グラニュラーシンセシス」というシンセサイザーの波形合成方式を、あえて手動のように取り組んでみたりしています。
今まで感覚で、それこそ幼少期のテープレコーダー時代から手動でやってきたことが、このプロジェクトを通して名前がついていた手法であったことを知り、自ずと学術的に整理されて、私の作曲人生の、答え合わせをしたり復習をしているような感覚です。
有り難いことに、他にもたくさんのプロジェクトにお声がけいただいています。
5月には、スペインの生物学系の映像アーティストとインスタレーションするためのライブセットを準備しています。
あとは、スイスやフランスのハイブリッドフードやバイオプラスチックで食器をつくるアーティストたちとグループを組んで、その食事中の音楽を担当したりもしています。ソロの活動でも、脳科学の理解と知識をさらにブラッシュアップして、音楽の新たな構文を作ることを目指しています。
また、Lena Andersson名義のアルバムもEomacと共に制作中です2018年は対外的なライブなどの活動はお休みしていた時期がありました。
その期間、スペインのアートテクノロジーセンターに住みながら、インスタレーションの模索やそのための機械を工作したり、色々と自分なりに模索することを中心に時間を過ごしました。時折、現地の物理学者さんたちに大小含めた自分の妄想や考察について話をして、私が作るものがファンタジー寄りのサイエンス・フィクションではなくて、論理に基づいたサイエンス・フィクションに近づけようと努力したりもしました。
そこで得たものがその後の自分の曲作りや現在の活動にも活かされています。

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